エアコンの運転モードを「ドライ」にする。設定温度は21度。24時間動かし続けた結果、家全体の電気代は1日320円と表示されていた。
夏の間だけ、つけっぱなしにしておこう。家に帰ると涼しい部屋が待っている。この快適さを覚えてしまったら、来年も同じ選択をするだろう。
午前5時37分、iPhoneのアラームに起こされた。
いつもより肌寒い朝、スカッと晴れた空。どことなく秋の雰囲気が漂っていた。
運動会の日の朝みたい。
エアコンをつけて寝たからだろう。涼しい部屋と差し込む日差し。ちょっとした非日常を味わっていた。
朝の身支度をして、燃えるゴミを片手に家をでる。
外も涼しい
部屋がいつもよりも涼しく感じたのは、外気が涼しくなっていたから。
夏も折り返し地点を過ぎたようだ。
あれだけ暑い、暑いと言っていたのに、涼しい朝になるとどこか寂しい気持ちになってしまう。
ピークを過ぎてしまったんだな、と弱気になってしまうのだろうか。
これから過ごしやすい日がやってくるというのに、暑い夏の日が忘れられなくなる。
夏に向かっているときは「暑いですね」と言えたけど、夏が去っていくときに「涼しくなりましたね」と言えないのは僕だけだろう。
涼しくなり、寒くなると、一人の殻に閉じこもりたくなる。
少しずつ変化する朝の気温、枯れていく植物、スーパーに並ぶ魚、それを感じながら自分の殻に閉じこもっていく。
全てがゼロになるように。
暑い日を感じられるのはあとどれくらいあるのだろうか、寒い冬を実感できるのはあとどれくらいなんだろうか。
邪魔者でしかなかった暑さ、寒さに向き合っている自分がいたり、小さな変化を探そうとしている自分がいる。
少しばかり気持ちにも余裕ができたからだろう、変化に気付くことができるのは。
あとどれくらいかしたら、金木犀の香りがするようになり、会社を出る頃には真っ暗になっている。
いつしか本格的な冬になり、朝起きるのがつらくなるのも体験済みだ。
涼しく過ごしやすかった朝、お盆休みの会社が多いのか通勤電車も空いていた。
これも来週になれば、いつもどおりの電車になり、再来週になれば学生も増えてくる。
今の時期のなんとも言えない雰囲気、なんともいえない世の中がたまらなく好きだ。
各々が全く違うことを考えていそうな今の時期が。
昨日とはちょっと違う肌寒い朝を迎えて、昨日とはちょっと違うセンチメンタルな気持ちになる。
明日、もし今朝と同じように肌寒かったとしても、何も感じないだろう。
何かが変化し始めているその一瞬に、強く心を奪われたのだ。
エアコンがちょっと強かっただけだと思った朝、いつもよりも布団に包まっていた朝、すっきりとした目覚めだった朝、澄んだ朝日がまぶしかった朝。
昨日とは違うそれらが、1年前にも感じた気持ちを呼び起こしてくれたのかもしれない。
いつもより足どりが軽く、いつもよりニヤニヤした気持ちで出社する。
通勤電車の中で眺めていたツイッターのタイムライン。
「秋の朝みたいだ」「いい匂いがした」というツイートから、同じように感じている人もいるんだなぁと、嬉しくなったのも今朝の出来事。
変化は急にやってくる。その変化に気がつけるかどうか、気が付いたときに面白く受け止められるかどうか。
いつもは日陰を探して待っているバスも、一駅歩くのが嫌になる駅も、今日からは大丈夫だろう。
夏の暑さが一休みしたことで、新しく感じることができたし、過去の気持ちを聞くことができた。
とはいっても、まだ暑い日は続くし、徐々に寒い日になっていく。その変化を大事にしながら、まだまだ「暑い日だな」と言い続けたい。
来週からはフルに勤務。無理しない程度に頑張っていこう。
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